12月4日、米労働省が発表した11月の米雇用統計は、非農業部門の雇用者数が21万1000人増と、市場予想の20万人増を上回る伸びとなりました。米経済の底堅さをあらためて示したこととなり、12月の利上げがほぼ確実と市場関係者は見ているようです。ただ、長期失業者や不本意なパートタイム就業者の改善は不十分であり、利上げのペースは極めて穏やかなものになると言うのが市場の見方です。
FRBの利上げは円バーツ為替相場にどう影響するのでしょうか?円に対するバーツレートを決める要因を大雑把に分けると、「対ドルのバーツの為替レート」と日本の金融政策です。
まず、は「対ドルのバーツの為替レート」から見ていきましょう。本来であれば、新興国からドルが逆流し対ドルに対してバーツは安くなるはずです。しかし、バーツは過去5年で既にドルに対して20%近く安くなっており、ここから急激にバーツ安になるとは考えにくいと思います。
1997年のアジア通貨危機以降、タイバーツの為替レートは1ドル=30~40バーツ程度で安定的に推移しています。アジア通貨危機後は政情不安、大洪水、津波などの災害、テロがあっても、さほど激しく変動はせず、ボックス圏での値動きといえます。
現在、バーツは1ドルが35.89バーツで取引されており、過去のボックス圏相場から考えてると、FRBが利上げした後のバーツの安も10%程度に限定され、しかもゆっくりとしたペースになると推測することができます。
次に、対円でのバーツレートを決定する要因として挙げられるのが「日本の金融政策」です。 対円でのバーツ為替レートは、タイの事情や対日との経済的関係よりも、どちらかというと日本側の金融/経済政策や経済状況が日本円の対ドルレートを変動させ、それに関連して変動する傾向にあります。
例えば、対円のバーツ高は、2005年~07年頃は円キャリートレードによる対ドルの円安期であり、2012年以降のアベノミクス&黒田日銀総裁の金融緩和政策による対ドルの円安期と重なります。
一方、対ドルの円安期は既に最終期を迎えているとうのが、一般的な市場の見方です。過去、30年のFRB利上げ後の対ドルの円相場は、殆ど円高に動いています。ただ、今回は米国の経済も磐石な強さはなく、利上げもゆっくりとしたペースになるだろうというのが一般的な見方です。また、日銀もインフレが2%になるまで、今後も金融緩和を継続するとしています。そうなると、FRB利上げ後の円高ペースもゆっくりとしたペースになると思われます。
まとめますと、2つの対円でのバーツレートの決定要因である「対ドルでのバーツレート」と「日本の金融政策」を考え合わせると、これからずるずるとバーツ高が続くことは無さそうです。おそらく、一時的に2800~2900近くまでバーツ高になることはあっても、その後はゆっくりとしたペースで円に対してバーツは安くなり、2016年中には3000~3100に下落するものではないかと予測します。